菅原伝授手習鑑【初段】

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菅原伝授手習鑑【初段】

(大序・大内の場)

ある時、中国の僧がやってくる。
中国の皇帝が日本の帝の絵姿を欲しがっているから描かせてくれまいか・・・と。
しかしタイミング悪く体調を崩している醍醐帝。すると左大臣藤原時平(ふじわらのしへい)が帝の代役を申し出る。それに右大臣菅丞相(かんしょうじょう)=菅原道真が待ったをかけて、丁度お見舞いに来ていた帝の弟斎世親王(ときよしんのう)を絵のモデルとするのが良いでしょうと提案した。
帝も斎世親王を自分の代役に立てるのを良しとして、金冠白衣(帝の服装)の斎世親王を描き、中国の僧は帰っていく。

おさまらないのは、左大臣時平。
あろうことか、金冠白衣を斎世親王から剥ぎ取り、持って帰ろうとする。
菅丞相が「誤って謀叛の名をとり給うか」と諫めて、その場は終わるが・・・。

また、書道の名人でもある菅丞相には、その筆法をそれに相応しい弟子に伝えるようにと勅命が下る(筆法伝授の段へ)。

(加茂堤の場)

菅丞相の領地の百姓、四郎九郎(しろうくろう)には梅王丸(うめおうまる)松王丸(まつおうまる)桜丸(さくらまる)という三つ子の息子たちがいる。当時三つ子は珍しく、人々が「不吉なことの前触れなのでは?」という中、菅丞相は「三つ子は吉相で縁起がいい」と三人皆を牛飼舎人として起用する(しかも皆、相当偉い人に)。
梅王丸は菅丞相、松王丸は藤原時平、桜丸は斎世親王。
だから、四郎九郎も息子たちも菅丞相に、大きな恩義を感じている。

そしてある時、事件が起こる。

加茂社参詣の日のこと。
帝の代参として斎世親王、そして時平と菅丞相の代理の者もそれぞれ参詣していた。つまり、梅王、松王、桜丸の三人も牛飼舎人として供をしている。

貴人の参拝を待つ間。
梅王丸と松王丸の会話。
それぞれの主人にはもちろん忠義を尽くすけれど、大恩ある道真様への忠義の心は決して忘れてはならぬぞと梅王丸。因みに・・・梅王は長兄。
そんなのは当然のことだ・・・と松王丸。
今度父ちゃんの古稀の祝いがあるから、嫁同伴で全員集合だ(賀の祝へ)・・・とか、そういう日常会話。

そこへ桜丸がやってきて、儀式も終盤だから二人も様子を見に行くがよい・・・と言われて、梅王と松王はその場を去る。とっても不自然なこの桜丸の行動・・・?

実は桜丸・・・体よく二人を追い払ったのだった。
梅王、松王の去った後、妻の八重(やえ)苅屋姫(かりやひめ)=菅丞相の養女を連れてきた。
そしてこのとき、牛車の中には何と斎世親王が隠れている。式を抜け出して苅屋姫と密会をする算段だ。桜丸夫婦はその手引きをしたのだ。
大事な儀式を抜け出したりして、大丈夫なの?・・・と思うが、心配通りこれが大事件の引き鉄となる。

若い二人の逢瀬のさなか、三善清貫(みよしのきよつら)が仕丁を率いてやってくる。
神事の途中に抜け出した斎世親王を捕らえるためだ。
牛車の中を改めようとする清貫。
桜丸は仕丁を跳ね飛ばし追い払う。・・・が、気がつくと牛車はもぬけの殻。
何と!
親王と姫は逃げ出して、そのまま駆け落ちしてしまったのだった。
八重に牛車を託して、二人のあとを追う桜丸。

何ということだ!・・・これは、只では収まるまい。
大事件だっ!

(筆法伝授の場)

菅丞相は自邸の一室に籠っている。
筆法伝授・・・さて、どの弟子に我が筆法を伝えるべきなのか。弟子の一人左中弁希世(さちゅうべんまれよ)は自分こそが筆法の伝授を受ける者だと思っている様子。しかし、書の腕前はたいしたことない。そもそも希世が欲しいのは、地位とか名誉とか・・・。
そんな穢れた心根のヤツに大事な菅家筆法を伝授など、到底・・・ムリだ。

希世が腰元の誰かを介して(今、菅丞相は身を清めて籠っているから直接は会えない)、菅丞相に届けてもらう書も、当然没。

自惚れが強い希世は、この日も若い腰元の勝野に戯れかかったりして、丞相の妻園生の前(そのうのまえ)にたしなめられる始末。
園生の前は、筆法伝授に集中している菅丞相に心配をかけたくないから、こんな希世のこともまだ心の内にしまっている(養女苅屋姫の駆け落ちなんかもあったから尚更だ)。

・・・・・。

腰元に案内されて、武部源蔵(たけべげんぞう)と妻の戸浪(となみ)がやってくる。
源蔵の身なりはボロボロだ。
この源蔵・・・以前は菅丞相の一番弟子だった。
一番弟子だったのだが、お屋敷に勤めていた戸浪さんと、まぁ・・・デキて、ヤッてしまったので、厳格な菅丞相に破門されてしまったのだ。
今は浪人中で仕事もないから、みすぼらしい格好になってしまっている。

でも、戸波さんは紋付の着物を・・・。
実はこの着物、昔お仕えしていた時に奥様からいただいたもの。大事な大事なものなので、どんなに生活に困窮してもコレだけは・・・という源蔵夫婦の丞相への思いが伝わってくるエピソード。

今も破門は解かれていないから、本当は丞相に会うことは許されないはずなのだが、特別な用があるというので呼ばれてやってきた。(戸浪さんは会えないから)源蔵だけが奥へ通される。

恐縮し、冷や汗を流しながら丞相と対面する源蔵。

実は、源蔵が呼ばれたのは、菅家筆法の伝授に値するかを見極めるため。

源蔵は今、村の近所の子どもを集めて、手習いを教えている(寺子屋の段へ)。
筆の道を捨てず、子どもに手習いを・・・と聞いた丞相は満足の様子。子どもに学問を教える・・・社会的な地位なんかとは無縁の世界だけれど、菅丞相はこれを「卑しからぬなりわい」だと言う。

まさに・・・!

次に、丞相は自身が精魂込めた書を手本に、源蔵に字を書くよう促す。
こんな立派な机で、しかもこんなに立派な紙になど書けませんと遠慮する源蔵(希世がちょっかいかけてきたりするもんだから、尚更書けない・・・コイツ・・・ウザ!!)。
しかし、更に命じられ・・・書く。

ココでもまた源蔵を妬んで希世がジャマしてくるけれど、負けずに見事書き上げる源蔵。

書の内容は・・・。

早春の景色を詠んだ有名な詩・・・らしい。
ただ上手なら良いというものではなく、躍動感とか、生命力とか、力強さとか・・・そういうものが伴わないとダメ。

これを、実際に役者さんが書き上げる。
邪魔するためにバタバタ動く希世と、学問の神様然とした動かぬ丞相。(この丞相をやれる役者さんがいる時にしか出せない演目だそうです。)

そして、源蔵の字に満足し、筆法伝授を決める菅丞相。
筆法伝授は貴重な巻物がもらえる。

よろこぶ源蔵。源蔵が喜ぶのは伝授を受けられるからではなく(ココが希世とは全く違う)、伝授を受けるのだから、きっと破門も解いてもらえると思ったから。
が、しかし・・・どこまでも厳格な菅丞相。

「伝授は伝授、破門は破門、さっさと出ていけ。」

そこに、朝廷からの使いの者がやって来る。
今すぐ参内せよ・・・と。

参内の準備に菅丞相が退席し、園生の前が現れる。
破門を解いてもらえぬ源蔵は、もう屋敷から出ていかなくてはならない。丞相に会えぬままの戸浪をかわいそうだと思い、せめて顔を見せてあげようと打ち掛けの陰に隠して連れて来たのだ。

準備を終えて出て来た丞相。
源蔵に筆法伝授の巻物を渡す。

出発のそのとき、紐が切れ丞相の冠が落ちてしまう。
不吉なものを感じながらも、菅丞相は出発する。

これが今生の別れとなるかもしれぬ。
泣きながら見送る源蔵夫婦。

こんな時なのに・・・忌々しい希世が、源蔵が伝授された巻物を奪い取ろうとやってくる。・・・が、逆にやっつけられるという(^^)/スッキリ。

源蔵夫婦はもう帰らなければ。
泣きながらお屋敷を後にする二人・・・。

(築地の場)

菅丞相のお供をしていた梅王丸が、大慌てで菅丞相の館へと駆けてくる。

やがて丞相が役人たちに囲まれて自らの館の門まで歩いてくる。同道してきた三善清貫によれば、加茂社での斎世親王と苅屋姫の密会が露見し、それが菅丞相による皇位簒奪の企みとされ、菅丞相は官位剥奪のうえ流罪との処分が決まったという。

筆法を伝授してもらえないとなったら、すぐ時平に乗り換えて、丞相を割り竹で打とうとする希世。コイツ(-_-メ)
が、梅王丸が割って入り突き飛ばす!
更に希世をぶちのめそうとする梅王を丞相が制止する。

朝廷に手向かいしてはならない。
それを聞かぬ者は七生までの勘当ぞ。

この言葉にはさすがに梅王も従うほかない。丞相とともに門内に入ると館は閉門となった。この閉門は、関係者を逃がさぬため。丞相の子菅秀才(かんしゅうさい)様の命が狙いだ・・・。

・・・・・。

そこへ、丞相の大事を知った源蔵と戸浪が現われ、希世や清貫を追い払う。
「道真さまの命令で邪魔するのか!」と希世。
「オマエが俺に、勘当者は出て行けと言ったのだろう。勘当の身のオレは丞相の家来ではない。暴れているのも勝手にやっているだけだ。」

こうして清行らを追い払った源蔵夫婦。
門を叩くと中の梅王丸が返事する。
梅王丸は、菅秀才様だけでも落ち延びさせようと、源蔵の言葉に従い塀の中から菅秀才を源蔵たちに手渡す。それを役人に見つかるも、源蔵は役人を斬り捨て戸浪とともに菅秀才を連れ、落ち延びて行くのだった。

(浄瑠璃)内と外での二つの忠義~~。

梅王丸は「園生の前」を守り、源蔵夫婦は秀才さまを自分の家に引き取って守ることとなったのだった。

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