祇園祭礼信仰記 ~金閣寺~

歌舞伎の勉強

ブログランキング・にほんブログ村へ

歌舞伎はやっぱり予習の上で見たいものだ( ̄ー ̄)エヘン!

祇園祭礼信仰記 ~金閣寺~

主な登場人物
■松永大膳
・将軍足利義輝を暗殺した国崩しの大悪人。
■慶寿院尼
・暗殺された将軍義輝の生母。
■松永鬼藤太
・大膳の実弟。
■雪姫
・狩野派の絵師将鑑の娘。
■此下東吉
・小田春永の命令で慶樹院救出に動いている。

あらすじ
事件の始まりは・・・。

松永大膳が、将軍足利義輝を暗殺した。
天下を我が物にしようというクーデターだ。
小田春永(=織田信長)と敵対している大膳は、義輝の生母である慶寿院を人質として、金閣寺に立て籠もる。

金閣寺の場

松永大膳が弟の鬼藤太と碁を打っている。ゆったり、のんびりとした空気。
謀反を企て、方々から狙われる身ではあるが、慶寿院様を人質に取っているから、差し迫った危機があるという訳でもないのだ。
そしてもう一つ。
こちらから仕掛けて出ようにも、現在大膳の元には優れた軍師がいない。ここは大膳の痛いところで、良い軍師が居たらすぐにでも召し抱えたいと思っている。

大悪党の貫禄漂う大膳と、なんだか小物風の鬼藤太。
碁を打ちながら、話し合う二人。
話のメインは、慶寿院様からのお願いについて。彼女は人質とは言っても、実は結構大事なお客様的な部分もあり、あまり無礙にもできない。
その慶寿院さまが、「この金閣寺の天井に龍の絵を描いてほしい」と言う。

龍を描くには結構な技術が必要で、そういうレベルの絵師は多くは居ない。
雪姫は、狩野派の名絵師狩野将鑑の娘で、龍を描ける数少ない絵師の一人だ。

雪姫に「龍の絵を描け!」と迫る大膳。
一旦は断る雪姫だけれど、実は夫の狩野直信が人質に捕られていて・・・。
(狩野将鑑の弟子の直信も龍を描ける一人で、大膳の申し出を既に拒否って捕らえられている。)

大膳は大膳で、美人の雪姫をどうにか自分のものにできないか・・・という思いも絡んでいて。

「絵を描け!」
「俺様のものになれ!」と。

大膳の愛人になるというのは、これは困った要求としても、龍を描くのは・・・どうなのだ?
そんなの、描いたらいいのに・・・とワタシなんかは思うのだけれど・・・。

で・・・実は雪姫も、別に描いてもいいと思っている。
夫の身の安全が大事だし、別に減るもんでもないしね。
でも問題なのは、実在しない龍を描くには「お手本」が必要だということ。
そして、狩野家に代々伝わるお手本の絵は・・・。
数年前、父親の狩野将監が殺され、そのときに盗まれ行方は不明。

途方に暮れる雪姫。

そんなところに、此下東吉(=木下藤吉郎)が登場する。
大膳の家来十河軍平に刀を突きつけられてやって来るが「やあ軍平その手籠めは何事ぞ」と大膳。そこまでしなくてよいと言う。

東吉が今、小田春長(=織田信長)に仕えていることは承知の大膳。

大膳:聞き及ぶ此下東吉とは其方よな。
東吉:ハッ。
大膳:春永を見限り、この大膳に仕えんとは頼もし頼もし。
東吉:恐れながら御譜代とも思し召し下されなばありがとう存じ奉る。
・・・・・。
大膳:碁盤もこれにあり。なんと一番打つ気はないか。

あいさつ代わりに「碁」を打ち始める東吉と大膳。

義太夫:大膳は先手の石打つや、現の宇津の山蔦の細道此下が、一間飛びに入り込んだも、松永を討って取る、岡目八目軍平が、助言と知らぬ大膳が、詞もあると打ちうなづき・・・。

謀反をくわだて、将軍義輝を亡き者にして慶寿院も虜にした大膳が、碁も先手の石を打つ。
一足飛びに大膳の屋敷に入り込んだ此下東吉との対局だが、傍目でみている軍平が東吉に助言をだしているけれど、大膳はそれに気づかない。

・・・?

これはどういうことなのか。
この軍平、実は本名を佐藤正清(=加藤清正)という。
つまりは東吉の味方であり、一足早く大膳の元に入り込み東吉を手引きしたのだった。

さて雪姫。
言う通りにしなければ夫の直信を殺すと言われて、泣く泣く身を許す決心をする。
それを大膳に伝えるのだが、大膳は碁に夢中。
雪姫の言葉を碁の用語と取り違え、中々話が通じない。

雪姫:イヤと言うたら夫の命。
大膳:イヤ、危ない事の大膳が石が既の事。
東吉:アイヤアイヤ、死ぬはこの白石。
大膳:どうやら遁れ鰈の魚。
東吉:白き方には目がなうて。

言葉遊び的に進行する碁の対局場面。

イヤ・・・夫の命を案じる雪姫に対して、大膳と東吉の興味は石の生き死に(取られないか取られるか)。
先手(黒石)の大膳は、我が石が危ないと言い、東吉が、アイヤ危ないのは私の白石(後手)だと。
大膳の「ピンチをのがれた」が「鰈」に掛かり、東吉が「鰈の白い方(腹側)には目がない」と返す。
後手(白石)だから「白石がとても大切だ」というのを掛けてる?

大膳の言った碁用語を「斬れ」と勘違いした軍平が、直信を斬りに行こうとするのを雪姫が慌てて止めるシーンがあり、やっと大膳は我に返る。

それでもまだ碁は続き・・・。
まぁ・・・どうにか対局は東吉が勝利する。

採用試験(?)は、更に続く。

大膳は碁笥(ごけ→碁石を入れる器)を井戸に放り込み、手を濡らさずに取るよう命じる。
東吉は、樋を使って滝の水を井戸に引き入れ、水で満ちた井戸に碁笥を浮かせて取ると言う機転を見せる。
碁盤を返し、取り出した碁笥をその真ん中に載せて、キッ!と見得を切る東吉。
そして、盤上の碁笥を打ち取った春永の首に例える。

大膳は上機嫌で、東吉の採用が決定する。

東吉と軍平は一旦退場。

・・・・・。

さて、大膳のもう一つのご機嫌材料。
やっと言うことを聞く雪姫だ。

調子に乗り(?)、龍の絵も描けと迫る大膳に、雪姫は描けないわけを言う。
「龍のお手本の絵がなければ描けない」と。

「ならば、龍の絵を見せてやる」

大膳が、持っている刀を抜いて滝にかざすと・・・。
なんと!
滝に龍の絵が浮かび上がる。
実は、この刀こそ雪姫が探している狩野家の家宝「倶利伽藍丸(くりからまる)」だった。

龍が描かれた家宝の書を探していると言うのは、父の仇を警戒させまいとする作戦で、本当に探していたのは、龍の絵を映し出す刀を持っている男だった。

で・・・、突然大膳に斬りかかる雪姫。

大膳はそれを避け、雪姫を投げ退ける。

大膳:ハテ心得ぬ。われを親の敵とは、何を証拠。
雪姫:その証拠とはコレこの剣、爺の雪舟唐土より持ち帰り、家に伝へし倶利加羅丸、朝日に映せば不動の尊体、夕日に向へば龍の形。父雪村まで伝はりしが、潅頂が滝の元にて、父を討たれ刀も紛失、されども倶利加羅丸といふ名をつゝみ、家の秘書が見えぬと云ひふらせしも、誠はこれこの剣を見出さうばかり、姉様ともろともに、心を砕いた父の敵、今といふ今剣の不思議を見る上は、敵もこなたに極まった、サア尋常に勝負しや。
大膳:いかにも潅頂が滝において、この刀を水に映し、龍の形をあらはし見る老人一人。我もその場に行きかかり、ひたすらに所望すれども承引せず。さてはその時討ち捨てた老人は雪姫そちが親・・・。

と、言うわけだ。

だが、所詮女の細腕。
雪姫は簡単に取り押さえられ、庭の桜の木に縛られてしまう。

様子を見ていた東吉が怒り狂い、雪姫を殺そうとする。
東吉への信用を強める大膳。

大膳は捕らえていた狩野直信の処刑を軍平に命じる。
家来たちは、雪姫も殺そうと言うが・・・。

桜の木に縛られた雪姫の美しさ。
殺すには惜しいと、後でもう一度口説くことにする。

大膳一味退場。

縛られた直信が軍平に引かれて出てくる。
共に動けぬ雪姫と直信との、別れの場面だ。

絶望する雪姫。
直信の命はもうじき尽きる。だが、それでも伝えなければいけない。父の仇は大膳だと。

あせる雪姫。

満開の桜の木に素足で縛りつけられている雪姫。

雪姫:我が祖父雪舟様、備中の国井の山の宝福寺にて僧となり、学問は仕給わず、とかく絵を好み給うゆえ、師の僧これをいましめんと、堂の柱に縛りつけ折檻せしが、終日苦しむ涙を点じ、足をもって板縁に画く鼠、縄を喰ひ切り助けしとや。妾も血筋を請けついで、筆は先祖に劣るとも、一念はおとりはせじ。

素足の雪姫はつま先で桜の花びらを並べネズミを描く。
すると、この鼠が命を持って抜け出て縄を食い切った。

逃げようとする雪姫を鬼藤太が止めようとするが、そこに現われた東吉の投げた刀で殺される。

ここで東吉は、真柴久吉(=羽柴秀吉)と名乗る。

大膳が鬼藤太に預けた倶利伽羅丸を、雪姫に渡す東吉。

直信を処刑するために連れて行った軍平も東吉の家来だから、そこは心配無用だ。
父の仇が大膳だと伝えに直信の元に向かい、雪姫退場。

・・・・・。

東吉は桜の木を登り、三階に幽閉されている慶寿院様を救出に。既に絶望し諦めていた慶寿院様だが、暗殺された義輝の弟慶覚が、春永の説得で還俗し、足利義照と名前も変え軍を起こすことを聞くと、勇気を出して逃げることにする。

東吉が付近で待つ侍たちに、狼煙で慶寿院の無事を知らせると、あたりには法螺貝や太鼓の音が鳴り響く。
東吉と軍平は、仲間の軍勢も呼び大膳を討とうとするが、大膳も戦闘態勢を整えている。

久吉と正清が、出てきた大膳と睨み合う。

地上では、大膳を討ち取ろうと・・・。
だが、今回は春長の指示通りに慶寿院様を救い出す事のみで引き下がり、大膳の本拠地である信貴山での決戦を誓うのだった。

「さらばさらば」 (了)

コメント